従業員一人ひとりを「幸せ」にするデジタルトランスフォーメーション
最低賃金引き上げは人件費の高騰に悩む企業経営者にとって頭の痛い問題だが、株式会社セールスフォース・ドットコム専務執行役員の千葉弘崇氏の見方は異なる。同社は長年、顧客管理システムを中心としたソリューションを提供。直販方式のほか、コンサルティング企業、システムインテグレーター、独立系ソフトウェアベンダーなどと協力関係を築くことで、ユーザーの課題解決をサポートしてきた。数多くの中小企業との接点から、千葉氏は、「前向きにチャレンジしているお客様が多い」と感触を語る。
「根底にあるのは、エンプロイーサクセス、つまり従業員の幸せです。いま企業は従業員の採用や引き留めに苦労しています。とくに中小企業はその傾向が強く、エンプロイーサクセスを実現して魅力のある企業になろうとさまざまな努力をされています。その一環として、積極的に給与面のインセンティブを強くすることに取り組んでいるお客様もいらっしゃいます」
エンプロイーサクセスにデジタル化は欠かせない
エンプロイーサクセスを高めるときに欠かせないのがデジタルトランスフォーメーション(以下DX)だ。デジタル活用で生産性を高めれば、少数精鋭で大きな利益を生み出し、従業員への還元も可能になる。
マーケティングや販売など、段階ごとに情報を可視化・数値化している
ただ、同じようにDXに取り組んでも、うまくいく企業と、思うようにいかない企業がある。両者の違いはどこにあるのか。
「企業の理念や存在価値に合わせてDXの方向性を決めることが大切です。
売上を上げたいのか、生産性を向上させたいのか、顧客満足度を高めたいのか。最初は漠然としていてもいいのです。ただ、ベンダーとコミュニケーションを取る中で、優先順位を明確にしていくべきです」
千葉氏が成功の条件としてもう一つあげるのは、経営者のコミットだ。
「エンプロイーサクセスがDXの目的でも、従業員のみなさん自身が急激な変化を嫌うケースが少なくありません。
現場を動かすには、経営者あるいはそれに近い層の人が『やるぞ』と言って変革をリードする必要があります。トップにその覚悟がある企業ほどDXは成功に近づきます」
編集協力 プレジデント社 企画編集本部