昨今の経済環境、社会動向、生活者のライフスタイル変化などにより、店舗経営者にとって〝未来図〞を描くことが難しくなっている。
特に飲食店経営者にとっては、人手不足や外国人スタッフの増加による教育コスト増、若者のアルコール離れ、今年10月からの消費税率アップなど、ますます厳しさを増している。
帝国データバンクの調査では、2017年度の飲食店倒産件数は、何と過去最多に達したという。
ただでさえ、新規開業店舗のうち3割が3年後には閉店し、10年続く店は1割ほどといわれる飲食店業界。それだけに、「飲食店を経営する方々には、是非、ITの活用を考えていただきたいと思います」と、タブレット型POSレジ『Uレジ』を展開する株式会社USEN ITソリューション事業部の事業部長・伊藤直嗣氏は語る。
「飲食店経営は参入障壁が低いため、新規開業が多く、限られたお客様を奪い合わねばなりません。しかも人口減少時代で、今後ますますパイが減っていく上、増税で消費者の財布のひもが堅くなるのは目に見えています。だからこそ、これからの飲食店経営では、さまざまな経営データを活用し、顧客満足・業務効率・利益の一体的な向上を目指すことが不可欠なのです」
POSレジの導入によってデータ活用と軽減税率対策を!
データの収集が第一歩。その組み合わせを考える
経営データを活用するには、POSレジや売上管理、顧客管理、予約台帳など、ITシステムを導入して多様なデータを収集し、〝見える化〞を行うことが第一歩となる。しかし、それだけでは不十分だと伊藤氏は続ける。
「何と何のデータを組み合わせて、どのような結論を導き出すべきなのかが大切です。たとえば、飲食店経営においてコストの大きな部分を占めるFL(仕入れと人件費)が売上の何%なのか。その割合が変動することで利益が何%変わるのかをみれば、原価に割けるお金や人件費の適正な金額を導き出すことができます。
近年は、飲食メディアにお店の情報を掲載して、サイト経由で予約を獲得することが当たり前になってきているため、どのサイトから何組集客できているかを意識している飲食店経営者が少なくありません。そこに客単価のデータを組み合わせれば、メディアごとの売上がわかりますので、広告出稿など費用対効果の高い投資についての成功方程式も把握できるようになります。
また、飲食店では、客単価を上げるために、スタッフに『もう一品』を勧めて追加注文をいただくように、教育しているところが多いと思います。そこでホールスタッフに、ハンディタイプのオーダーシステムでテーブルごとの客単価を可視化させれば、スタッフは店長の指示を待たずに目標単価にあと一歩の来店客に、ドリンクやデザートを最適なタイミングでお勧めすることができ、店舗の売上を最大化させることにつながります。
このようにPOSのデータは、経営者や店長だけでなく、店舗スタッフも活用することによって、合理的に店舗経営を加速させるのです」
さらに、このハンディタイプのオーダーシステムを導入すれば、注文から料理提供までの時間が短縮でき、手書きによる記入ミスも防げる。つまり、業務効率化と顧客満足の向上を同時に実現できるわけだ。「ITを駆使し、データを取得することまでは決して難しいことではありません。
ただ、その効果を最大化するには、的確な助言ができるパートナー、それも飲食店経営に精通しているパートナーの存在が重要になってきます。私たちは、それを目指しています」
ところで、今年10月に予定されている消費税の増税。飲食店にとって大きな影響が予想される改正だが、まだまだ準備不足のお店が目立つようだ。
「当社が調べたところ、対応の準備が遅れている中小規模の飲食店が全体の半分ほどありますが、そのうちで、システムの導入など、何らかの対応が必要なお店は3割にものぼっています。
また、軽減税率の導入で、税率8%と10%を仕分けなければならないなど、相当複雑なオペレーションが求められるようになるはずですので、早急に、消費税率変更への対応準備を進めていただきたいと思います」
複雑怪奇な軽減税率はクレームの原因に
たとえば、『オロナミンC』は税率8%なのに対して、『リポビタンD』は医薬部外品のため10%になる。テイクアウトのみのケーキ屋はすべて8%だと思うかもしれないが、ロウソクを販売したときの税率は10%だ。飲食店でも、店内で食べれば10%だが、テイクアウトや出前・宅配の場合は8%が適用される。このように軽減税率の適用範囲は複雑で、細部まで覚えるのは困難だ。間違いなく運用するには、POSレジのマスターに仕分けを登録しておくのが、確実な方法だろう。
「複雑なオペレーションを展開しようとすると、それがかえってクレームの原因にもなります。アルバイトのスタッフに短期間で覚えてもらうのは難しいですし、そのためのコストをかける余裕もないというのが現実でしょう。また、お店ごとに商品の種類や内容、オペレーションも異なるため、間近になってからでは間に合わなくなるかもしれません。今なら、軽減税率に対応したPOSレジなどのシステム導入に対して補助金が出るので、早めの検討・対応をオススメしています」
軽減税率対策だけではなく、経営データの活用という面から考えても、これからの飲食店経営者は、ITソリューションの導入による業務の改善・革新を進めるべきではないか。また、これは飲食店経営者に限ってのことではない。店舗経営を担い、さらなる事業の飛躍を考えている経営者すべてにいえることでもある。
飲食店経営者なら経営する店を俯瞰して、今後の業務効率化と顧客満足度向上、消費税対策を考えるといい。ITシステム活用に着手するのならば、的確な助言ができるパートナーを見つけることが大切だ。
編集協力 プレジデント社 企画編集本部